お薬の過剰摂取(オーバードーズ)と薬局の役割― 地域で命と健康を守るために ―
公開日 : 2025年11月10日(月)最終更新日 : 2025年11月10日(月)
カテゴリ・タグ : 薬物乱用・ドーピング関係
はじめに
最近、全国で「市販薬を通常の使用量を大幅に超えて摂取(過剰摂取)してしまう」こと、いわゆるオーバードーズが問題になっています。風邪薬や頭痛薬、眠気をとるお薬などを一度に多量に服用してしまい、体調を崩して救急搬送される方も少なくありません。特に若い世代では、SNSの投稿をきっかけに誤った方法で薬を使ってしまうケースが目立っています。
薬は正しく使えば健康を守る大切なものですが、使い方を誤ると大きなリスクになります。だからこそ、薬局と薬剤師が地域の安全を守る存在として注目されています。

薬局での販売と現状の課題
市販薬には「薬剤師から説明を受けないと買えない薬」と「誰でも買える薬」があります。説明が必要な薬は安全性に注意が必要なものですが、誰でも買える薬でも、用法を誤って使用すると体に悪影響を及ぼす可能性があります。
実際には、同じ薬を短期間に繰り返し買うことや、複数の薬局を回って買い集めることも可能です。そのため、乱用や依存につながってしまうリスクを、薬局側がどう防ぐかが課題になっています。また、「お渡しできません」と販売を断ることは、薬剤師にとっても大きな負担であり、利用者とのトラブルになる可能性もあります。
薬局ができること
次のような取り組みが大切だと考えています。
- 購入状況を確認する仕組みづくり
短期間で繰り返し同じ薬を買う場合には、販売を控えるなどのルールを明確にします。 - 販売記録の整理と情報共有
電子記録を活用して、薬剤師同士で「どの薬がどれくらい販売されているか」を把握しやすくします。 - 地域や行政との連携
問題が疑われるケースでは、医療機関や行政と相談できる体制を整えることが重要です。
正しい使い方を広めるために
薬局の役割は「売らないこと」だけではありません。地域の皆さんに薬の正しい使い方を伝えることも大切です。特に若い世代には、学校や地域活動を通じて薬の危険性や安全な使い方を知ってもらう取り組みが必要です。薬局は「薬を渡す場所」から「健康を守る場所」へと役割を広げていくことが求められています。
市販薬の過剰摂取は、一人ひとりの問題にとどまらず、地域全体の健康に関わる大きな課題です。薬剤師は薬を正しく渡すだけでなく、乱用を防ぎ、地域で安心して暮らせる環境を守る責任を担っています。
北海道薬剤師会としては、薬局が「地域の安全を守る最後の砦」として役割を果たしていけるよう、毎年行われる薬物乱用防止キャンペーン(健康づくり委員会担当)や行政等の団体と連携して開催される薬と健康の週間でのイベントなどの場で情報発信を続けてまいります。

