避難所の環境と聞いて何を思い浮かべますか?例えば水や食料、プライバシーの問題など、様々な課題が浮かんだことと思います。しかし、見落とされがちなものの一つに「空気環境」があります。
災害時に開設される避難所は体育館や公民館など地域の公共施設に開設されます。大規模な災害では多くの人が集まり避難所生活を行います。過去の災害ではプライベートに配慮された仕切りなどはなく、人がひしめきあう状態でした。実は、災害で亡くなる方の中には、けがなどの直接的なことだけでなく、避難所生活の中で体調が悪化したことが原因となるケースもあります。そのため、避難所では「体調を悪くしない環境づくり」がとても大切です。
体育館や公民館などの建物に多くの人が集まると、空気がこもりやすくなります。「息苦しい」「頭が重い」「なんとなくだるい」と感じたことはありませんか?これらは、体調悪化のサインでもあります。空気が入れ替わらない状態が続くと、頭痛や眠気、だるさが出やすくなり、免疫力も低下します。その結果、風邪やインフルエンザなどの感染症が広がりやすくなります。体力の落ちている高齢者や持病のある方にとっては、特に注意が必要です。また、空気が滞ることで、結露やカビが発生しやすくなることも問題です。カビはアレルギー症状や咳、喘息の悪化につながることがあり、長期間の避難所生活では見過ごせないリスクとなります。


さらに冬の避難所では、寒さ対策として石油ストーブなどの暖房器具を使い続ける場面も多くなります。換気が不十分な状態で暖房を連続運転すると、一酸化炭素中毒という命に関わる事故につながる危険性もあります。空気の管理は、快適さだけでなく、安全を守るためにも重要なのです。こうした「体調悪化の原因」を減らすために、避難所では換気が欠かせません。そして、この換気について専門的な視点で関わっているのが薬剤師です。


薬剤師の中には、学校で子どもたちの健康を見守る仕事をしている人もおり、教室の空気の状態を確認し、体調を崩さない環境づくりを行っています。この経験が、避難所でも生かされています。最近の災害では、薬剤師が避難所を回り、空気の状態を確認しながら、無理のない換気の方法を提案しています。これは薬を使う前に、体調を崩さないようにするための支援です。
ただし、北海道では「寒さ」が大きな課題になります。寒い中で窓を開けることに抵抗を感じるのは自然なことです。ただでさえ寒いのにさらに換気するとか正気の沙汰じゃない!と思う方もいるでしょう。筆者も学生時代に真冬の教室の換気でクレームを言った経験があります。冷えは体調悪化の原因になり、特に高齢者では血圧の変動や体力低下につながることもあります。
このため、北海道薬剤師会では、冬の避難所を想定した訓練に参加し、体を冷やしすぎず、空気を入れ替える方法について検討しています。その中で分かってきたのは、広い避難所では短時間の換気だけでは十分でないことが多いということです。




ここで、道民の皆さんにぜひお願いしたいことがあります。それは、避難するときの持ち物に、十分な防寒具を用意しておいてくださいということです。暖かい服装であれば、換気の時間を確保しやすくなり、空気をきれいに保つことができます。これは自分の体調を守るだけでなく、周囲の人が体調を崩すのを防ぐことにもつながります。避難所の生活で大切なのは、「我慢すること」ではありません。少しの工夫と備えで、体への負担を減らすことができます。
目に見えない「空気」に気を配ることも、避難所で元気に過ごすための大切なポイントです。いざというとき、少しでも安心して過ごせるよう、今からできる準備を一緒に考えてみませんか。



